がん闘病記と日々雑感

~右往左往の備忘録~

③<検査と告知>2016年12月

<2016年12月5日pm T病院 内科>

待合室で待っているうちに辛くなり横になると、看護師が慌ててベッドのある部屋に連れていった。横になって胃を押さえ、唸っている状況。

内科のI先生が来て、そのままそこで受診。胃痛を止めるための点滴と胃薬を処方された。また、翌日からの検査の設定もする(CT、内視鏡)。I先生に、昨夜何を食べたか聞かれ、喉の詰まりがあって何も食べていないと答える。かかりつけ医から「ヒステリー球」と診断されていることを伝えたが、怪訝な表情をされる。そんなはずはないと顔に書いてある。どこでその診断を受けたのか聞かれる。

<12月6日 T病院 CT検査。胃の異常なし>

I先生から「食道裂肛ヘルニア」の疑いがあると言われる。

夫に食道裂肛ヘルニアのネット情報をLINEすると、「きっとそれだ!信憑性ある!」と返信があった。私もそう思った。治療は不安だが、これで半年も続いたやっかいな喉の詰まりとの戦いが終わると思うと、嬉しくもあった。たまたまエレベーターで会ったI先生にそれを伝えると、「まだ分かりませんよ」と苦笑される。

帰宅後、ヒステリー球なんかじゃなかった、そもそも私、そんなタイプじゃないもんね~、なとど、夫と話した。次の内視鏡検査(=胃カメラ)ではっきりするだろう。 

 

<12月12日 T病院 内視鏡検査>

内視鏡は麻酔を使ったため苦しさはなし。麻酔ありを選択したのは、この喉の詰まりではとても内視鏡が通るとは思えなかったからだ。でも検査後、なぜか痛みを覚えていた。

リカバリー室に様子を見にきた看護師にそれを伝えた。

看護師「あのね、食道に腫瘍があったの…それで組織を検査のために取ったからその痛みを覚えているのかもね」

私は驚いて「腫瘍?それは何ですか?」と尋ねた。

看護師、返答に困った顔をする。

看護師「先生に聞いてください。すぐに診察受けますか?」と言った。

診察日の予約は3日後だったが、腫瘍が気になるのでその日の午後に診察の予約を入れ直し一旦自宅に帰る。何が何だか分からない。動揺したまま、栄養ドリンク(明治メイバランス)を飲み、すぐまた病院へ。すると、同じ看護師から担当が内科から外科になったことが告げられる。それに伴って、担当がI先生からT先生になる。T先生が手術中なので、2時間後にまた来てと言われる。また一旦自宅へ。自宅で何をしたのかは覚えていない。動揺と混乱。

その後、病院に戻って外科のT先生に会う。

開口一番に「生検の結果が出てないのに診察に来られても困るんだよね~」と言われる。

そういうものなのかと思いつつ「いや、そうなのかもしれないけど、とりあえず痛みがひどくて何とかしたい」と伝える。

先生「あ、そういうことね。では痛み止めを処方しましょう。ところで食べるのは大丈夫なの?」

私「いや、食べられないので明治のメイバランスという市販の栄養ドリンクを飲んでます」

先生「では、エンシュアリキッドという栄養ドリンクも出しましょう。一本で250キロカロリーのやつ。メイバランスよりもサラサラしているから飲みやすいですよ。」などのやりとり。(今思うと、どうでもいい…)

 

私は「あの…腫瘍があると聞いたんですけど」とやっと言った。

すると先生は、モニターの画像を見せてくれた。

息を飲んだ。

何となく腫瘍とはニキビのようなものを想像していたのだが、そこには全く違うものがあった。白くヌメヌメとした、大きなタラの白子のような形状のものが、食道の中ほどから胃の入り口まで続いていた。ほとんど隙間がない。

しばらくの沈黙の後、やっと「これは…一体何ですか?」と聞いた。

先生「生検の結果待ちなんだけど、私には悪性に見える」

私「え?悪性って…まさかガンですか?」

先生「次の診察で生検の結果を言うから、旦那さんと一緒に来てください。10日後です。もし悪性だったらここでは治療出来ないので紹介状を出します。ここの提携でも良いし、ご自分で探してもらった病院宛でもいい。いずれにせよ次の診察時には紹介状を出せるよう用意をしておくので、それまでに病院決めてください。」などと言いながらパソコンを打つ。

進行性食道癌という文字が見える。

私は「病院はどう決めたらいいんですか?」などと、動揺と混乱から意味のない質問をする。

先生は「ガンに見えるけれど良性の可能性もある。病院は自分でネットなどで調べてください。食道ガンは今、放射線治療と手術ではあまり結果が変わらないんですよ」などと立て続けに言う。

放射線?手術?その時の私には全く頭が及ばない。混乱したまま、診察室を出る。今振り返ってみると、この時の会話はほとんど噛み合っていない。外来日でもないのに突然来た、性質がまだ不明の腫瘍をもつ患者vsそれに対峙する医者。

 

その後、待合室で呆然としていると、内視鏡に付き添った看護師さんに声をかけられる。私が落ち込んでいるのではないかと心配しているようだ。その気持ちが嬉しかった。私は、「T先生、困ってたみたい。生検の結果が出てないのに診察出来ないと言われたんですよ」などと、腫瘍に関係のない事を言った。その看護師さんが無理に入れてくれたアポだったので、彼女も同じことを先生から言われたのではないかと心配だったから。人の事を心配してる場合ではないのに、なぜかそんな事が気になる。あと、腫瘍があると内科から外科に移されるんだと思った(その刷り込みは良くなかった)

 

帰ってから夫にLINE。詳しいことは帰宅後に聞くが、診察日の有休は取っておくとの返事。スタンプもなしの要件のみ。夫も動揺している。生検の結果は10日後に出る。食道ガンをネットで見たら恐ろしいことばかりが出てきて、すぐに見るのをやめる。

 

その後、良い病院を探さなくてはと、友人のY子に電話。彼女の夫さんがガンを患ったことがあり、病院に詳しいと思ったからだ。彼女からはもしガンだった場合は、がんセンター柏や有明、築地などのがん専門病院が良いと勧められる。「でも絶対良性だよ! ただのポリープだよ!」と言われ、なぜか「絶対」という言葉に引っかかる。どちらにしろ、「絶対」ではない。

 

夫帰宅。色々話し合う。白子の画像のこと、先生の見立てのことは話したが、まさかガンなんてあり得ないという気持ちは夫も一緒だ。血縁者にガンはいない、3ヶ月前の人間ドックでも何も出ていない、など話し合う。次々と、ガンを否定する材料を考え出す。

ネットを見るのが怖いことを話すと、代わりに見てくれることになった。とにかく早く病院を決めなくては。

 

<12月13日 病院探し>

がん専門病院は家から遠いし、まだガンと決まったわけではないので、候補から外す。まずは家から近いところ、そして症例が多いところ、予約がすぐに取れるところを候補にする。食道の名医がいるJ医院か、T大病院か、東京医科歯科か。駒込病院も条件にはかなっているけれど、以前長時間待たされた苦い経験があるため候補から外す。

とりあえずJ医院に予約の電話をしたところ、9日後の検査結果診察日の午後が取れたため、J医院に決定する。受診希望を入れたのは「食道外科」。外科か内科かは深くは考えなかったが、東京病院で腫瘍が見つかった途端、外科に移された経験から、腫瘍がある場合は外科という思い込みがあった。また、「食道」と名の付く科は外科だけだった。 

ところで予約センターに、ルーティーンの質問である生年月日や住所などの他に「紹介状は手元にありますか?」と聞かれる。どうやらそれもルーティーンらしい。「あります」とウソをつく。更に「宛先は何科になっていますか?」と聞かれる。「食道外科」と答える。宛先どころか紹介状も実際は9日後に手に入る予定だ。それが手元にくるまで待って、予約電話するのが決まりらしい。そんなことをしたら、予約がさらに遅くなる。手に入ることが分かっているものを律儀に待って連絡を入れる人などいるだろうか? バカ正直にやっていたら早めの予約もとれないことが分かった。結局、病院決めは案外すんなりと、腫瘍が見つかった翌日に決まる。

 

<〜12月21日 検査結果が出るまで>

夫と毎日色々話す。きっと良性だよ!とか、J医院の予約もすぐに取れたし、まだまだついてる!とか。(私と夫は、「私たちの人生には何だかんだとツキがある」と信じている。)

Y子は相変わらず、「絶対良性」と言う。励ましてるつもりなんだけど、逆に辛い。

友人のNさんからクリスマスの誘いがあり、一連のことを話す。ヒステリー球と誤診した医者に対してとても怒っていた。

とにかく時間がたつのが長い。受験の結果を待つようだ。白子の画像がちらついて、全く食べる気がなくなる。元々詰まりで食べられないけれど、努力して少しでも食べてみようという気も失せた。体重がどんどん落ちてきて、気持ちもどんどん落ちていく。痛みと苦しさ。分からない怖さ。これからどうなるんだろう…

動揺と混乱の中、治療費の目処はつけておこうと、生命保険を確認する。残念な事に2年ほど前、保険の見直しをやって、ガン保険を解約していた。2人に1人はガンにかかると言われる前から入っていたもので、その頃のガン保険は保険金額が安いわりには保障が手厚く、宝クジに当たったような一時金と入院費が出るものだった。解約の際に、「もうこんな内容の保険商品は出ませんよ、解約したら再加入は出来ませんよ」と言われたものの、「ガン家系ではないし検診も毎回オールAだから大丈夫」などと言って解約した。見直しなんてしなければ良かったと後悔したが先に立たず。その他に入っていた生命保険の特約項目を調べ、念のため、保険コンサルタントに連絡を入れておく。

 

<12月21日am T病院 告知>

外科のT先生、私には顔を向けずに夫の顔を見て話をする。夫が聞き逃すくらいサラリと「悪性でした」と言った。

「年末なので治療までの精密検査がスムーズに行くと良いけど」とか、「治療には手術と放射線治療があるけれど、食道ガンの場合、成績は変わらない」とか、色々話すが、全く頭に入ってこない。

最後に、私に向かって、「カオルコさん、頑張って治療して治すんだよ」と静かに言った。

当時は頭が真っ白で、ろくな返事も出来なかったが、今思い出してもこの言葉は泣けてくる。優しい人なんだろう。ガン告知なんて、彼も辛いのだろうと思った。待合室で紹介状発行を待っていたら、自然と涙が出てきた。だめだった。良性じゃなかった。これからどうなるんだろう。